千身一夜物語
- 美しくズレてる症例集 - 
あなたの美談の裏に揉み消された(笑)、身体の物語。
※この症例は、実際の臨床経験に基づき、個人情報の保護と読みやすさのために一部構成や表現を調整しています。
casereport.6235:右肩周辺の痛み 女性 50代~ 主婦 横浜市 港南区在住

天井を磨いた手が、肩の奥で泣いていた。

50代~ 女性 主婦 横浜市 港南区在住
“美しさを保つ”という信念は、 いつも暮らしの見えないところに宿っている。 けれどその信念が、からだの気づかないところを苦しめていた...

「右肩が苦しい」「肩甲骨の外側が痛い」「眠れない 肩こり」「左のおしりが痛い ズボンが履けない」などでお困りのあなたへ—— その症状、もしかして“がんばり屋のズレ”かもしれません。


私、なにかしましたっけ?

わたし、掃除するの好きなんです。 特に、普段手の届かないところをきちんとしておくのは、 美しさを保つ秘訣だと思っています。 だから4ヶ月前も、つい天井の掃除を何度も繰り返してしまって。 年末でもないのに、ですよ(笑)。

でも、不調なんです…

ただ、最近は——眠れないんです。 右の肩が苦しくて、夜中に何度も目が覚めてしまう。 じっとしていても痛くて、動かすともっと痛い。 「綺麗にしたはずの空間で、どうしてこんなに身体がつらいの?」 そんなふうに、ふと感じてしまう夜が続いています。


身体が語っていた、もう一つの物語

検査の結果、右肩に直接の原因は見当たりませんでした。 原因はもっと深く、 左の骨盤——仙腸関節に生じた小さなズレから始まっていたのです。 骨盤の傾きが腰椎をねじらせ、 そのねじれが、右の広背筋に無理な引き伸ばしを生み、 肩甲骨の外側に“苦しさ”として現れていました。 一方で、左足を上げたときにズボンが履けない、 という感覚もまた、この仙腸関節の不具合から来ていたのです。

美しく、スマートに読み解く。

施術では、腰椎と骨盤の調整を第一に。 初回で右肩の押圧痛はほとんど消え、 左の臀部の痛みも明らかに軽減。 2回目には「押されるのがむしろ気持ちいい」との変化があり、 3回目には「夜、ぐっすり眠れている」との声をいただきました。 整えたのは、肩だけではありません。 “美しくありたい”という気持ちと、 “無理なく生きる”という身体との関係性。 そこに、静かなバランスを取り戻したのです。

もっと詳しく(検査・施術の詳細)

患者情報:
50代~ 女性 主婦 横浜市 港南区在住

来院理由:
右肩周辺の痛みで来院しました。右肩甲骨の外側の部分は、痛いというよりは苦しい感じがします。この苦しさで夜、眠ることができません。1年前にも同じような症状がありました。じっとしていても痛むが、動かすと更に痛みが増します。4ヶ月前に天井の掃除を何度も繰り返し行ったのが原因ではないか?と思っています。

主訴:
右肩周辺の痛み

症状:
・右肩甲骨の外側の痛み ・苦しさ
・右二の腕の痛み
・左のおしりの痛み。左片足立ちでズボンをはけない。
通院期間/回数:1[回/週]×3回 後日、連絡をとってみましたが、『今もぐっすり眠れて調子よい!』とのこと

原因:
左骨盤に生じたズレが腰椎のズレを誘発し、酷使して硬縮した右広背筋を伸張した為、今回のような症状が生じていると推測されます。

触診をすると、右肩甲骨外側の痛みは、右広背筋から生じていることが判明しました。右広背筋は硬縮しているが、少し圧を加えると非常に痛がります。腰の状態を検査すると、腰椎は、右回旋偏位を起こしていました。このことから、腰椎の右回旋により硬縮した右広背筋が伸張されて痛みを生じさせているようです。骨盤の状態を確認すると、左仙腸関節が後方に偏位していました。仙腸関節の下部耳状面にズレが生じ、左足を上げた時に仙腸関節がうまく動かずに痛みを生じているようです。

施術は、骨盤と腰の骨格調整を行いました。

施術と施術後の経過は、
・1回目:はじめに腰椎の右回旋偏位と左仙腸関節の後方偏位に対して骨格矯正を実施した。その後、右広背筋を押圧しても痛みがでないことを確認した。本人曰く「痛みがほとんど感じられない」 また、左殿部の痛みが消失したことを確認した。
・2回目:1週間後に経過を尋ねたところ、まだ右肩外側の痛みが少し残っている感じがあったとのこと。そこで、右広背筋の緩和を中心に施術を実施した。右広背筋の緩和時には痛みはなく、「凝り固まっているところが押されていてむしろ気持ちいい位」との感想。
・3回目:さらに2週間後に経過を尋ねると「夜、ぐっすり眠れるようになりました」、また、痛みも感じられないとのこと。痛みが再発していない事が確認できたので、施術を終了としました。

肩が痛いのに腰が原因なの? と思われるかもしれませんが、実はこのようなケースはよくみかけます。今回の症例に類似した症状の患者さんは、肩が痛いので、肩をマッサージしてもらうようですが、真の原因は肩にあるわけではないので、同じ状態が延々を繰り返されてしまうようです。この症例からも、必ずしも「痛い個所」=「原因個所」という事ではないことが理解して頂けるのではないかと思います。

背中が凝る、肩が凝る、でも、マッサージに行っても症状が繰り返してしまう。そのような時は、凝る場所だけに着目するのではなく、もしかして他に原因があるのでは?と考えて見てください。

当院では、同じ症状を繰り返してしまう患者さんに対しては、治療よりもまずお話を聞かせて頂くことを重視しています。この症例の様な症状を持つ方は、まずは、カウンセリングを受けて頂き、自分の身体の現状を原因を理解して、施術にのぞんでみてください。

予防・セルフケア:
再発予防として、肩周りの筋肉を固めないようする為の肩こり体操の指導および骨盤のズレを予防する為に座り方の指導を行いました。

バキッと鳴るのは、あなたの思い込み。

「痛い場所=悪い場所」 「痛い場所=悪い場所」 「肩がつらいなら肩を揉む」 そう思い込んでいるかぎり、 身体は同じ場所に、何度でも“苦しさ”を繰り返します。 原因は、いつもそこにはいない。 それが、構造という名の身体の物語です。


美しくズレてたのは——わたし?

誰かのためではなく、自分のために整えてきた暮らし。 その心は、まっすぐで、正しい。 けれど身体は、知らず知らずのうちに偏りを溜め込んでいた。 “ズレ”とは、心のまじめさと、身体の限界がすれ違った結果だったのかもしれません。

※この物語は、実際の治療をもとに構成された物語調の症例紹介です。

著者について

珈琲卿
珈琲卿(コーヒーきょう

日々、患者さんたちの心身に宿る “ズレの物語” を読み解きながら、 それぞれの身体が歩んできた人生の跡を、静かに、けれど少しだけ面白く綴っています。

本業は、横浜・保土ケ谷でカイロプラクティック整体院「ローカパーラ」を営むカイロプラクター。
プロフィールや理念などは、こちらをご覧ください。

※ちなみに「珈琲卿」は、私がコーヒーを愛しすぎた故のペンネームです。
書いているうちにテンションが上がり、少々“珈琲狂(?)”になることもありますが、 どうぞ安心してお読みください。施術は、至って真面目に行っております。